成仏しちゃう
5.成仏しちゃう
時は昭和。小説家が机に向かってペンを構えている。名も無き幽霊がその背後にいる。
小説家「…。あの、落ち着かないのですが」
幽霊 「すると、ハーブティーを淹れてくるといいですよ」
小説家「…。そうさせていただきます」
小説家が行くと、幽霊はそれについてくる。
小説家「どうしてそうやってついてくるんですか」
幽霊 「ついていきますよ。逃げられたらどうしようもないですからね」
小説家「だからって、刃物押し付けないでもいいでしょう」
小説家がちょいとどくと、幽霊は刃物を持っている。
幽霊 「こうでもしないと書いてくれないでしょう」
小説家「大体、あなた幽霊なんでしょう。なのにどうしてそんなにも現実的な攻め方をするのですか」
幽霊 「分かりましたよ。こうしたら書いてくれるのですね」
幽霊は刃物を投げ捨てる。
小説家「あ、危ないなあ」
幽霊 「ほら、書いてください」
小説家「…書く」
机に戻る。小説家、書き始める。
幽霊 「今、何を書いていますか?」
小説家「…」
幽霊 「私の遺作をかいてくれるんですよね」
小説家「…」
幽霊 「調子に乗って、今、自分の作品書いていますよね」
小説家「本業ですから」
幽霊 「えいっ!」
幽霊は小説家に対して何かしらの攻撃のポーズ。
小説家「げえっ」
幽霊 「書くって言いましたよね。私の言葉をちゃんと文にするって言いましたよね」
小説家「そん、そんな飛び道具あるなら言ってよ。刃物なんて出さないで初めからそれにしといてよ」
幽霊 「ほら、書いてください」
小説家「あんたも小説家だったら分かるだろう?アイディアがあふれ出て止まらない瞬間が。今がそれなんだよ、邪魔しないでくれよ」
幽霊 「私は100年以上待っているじゃ!」
小説家「知らないよ、そんなこと」
幽霊 「聞くのも耐えないつらい話だ」
幽霊は過去を話し始める。小説家は自分の小説を書き始める。
幽霊 「時はさかのぼること江戸時代。当時は鎖国体制により、外国の文化など一寸たりとも受け付けていなかった。物語を書きたかった私は、新しいものを求めたが、当時の日本は世襲世襲。新しいものなんて…なかったよ」
小説家「ああ、島国だからね」
幽霊 「だから私はより一層外国に焦がれた。外国の話は面白いぞ、と」
小説家「ああ、島国だからね」
幽霊 「私は開国を待った。いつか来るだろう、開かれた時代を夢見て。確かに、日本は開国したが、海外じゃ怖い存在だった」
小説家「まあ、それは島国だから」
幽霊 「結局海外と触れ合うこともなく人生は過ぎた。そこで一つ未練ができて、私は今ここにいる」
小説家「うん。島国だから」
幽霊 「おい、気づいてないと思うなよ」
またもや幽霊はハンドパワーで攻め立てる。
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