放課後かくかくしかじか
放課後の教室。
女子高校生二人の会話劇。
佐藤(上手側)と山田(下手側)が机を向かい合わせにして、勉強をしている。
しばらく2人とも勉強に集中している。

山田「ーーねえ、佐藤。」
佐藤「どうした、山田。」
山田「うち、ダイエットしようと思って。」
佐藤「え、何で?する必要ある?」
山田「1ヶ月前にさ、家の近くに横浜家系ラーメンが出来たのよ。美味しくてほぼ毎日通ってたら、なんと3キロ太ってた!」
佐藤「そりゃ太るわ。」
山田「マジでやばいかも。腹の肉なんて、ぽっちゃりってレベルじゃなくなってきたよ。(お腹の肉をつまむ)」
佐藤「はい。(手を挙げる)ここで爆弾を落としてよろしいでしょうか。」
山田「どうぞ、佐藤選手。」
佐藤「ででん。男の言うポッチャリと女の言うポッチャリ、めちゃくちゃ違う説ー。」
山田「あーー、ダメダメ。それはG7サミットで話し合うレベルの議題だから。うちらが手を出したらあかん。」
佐藤「あんた今、公民の教科書見てるでしょ。」
山田「バレたか。」
佐藤「山田がそんな難しい言葉知ってるわけないからね。からの俺のターン!APEC!アジア太平洋経済協力会議を召喚だ!(かっこいいポーズ)」
山田「なにい!こいつ、数学を勉強しているのに!?」
佐藤「ちなみに、山田の大好きなペペロンチーノの正式名称は、アーリオ・オリオ・ペペロンチーノです。」
山田「やだ、めちゃくちゃどうでもいい〜。」
  
2人、急に勉強に戻る。
しばらくの間。
  
山田「ねえ、佐藤。」
佐藤「どうした、山田。」
山田「うちさ、彼氏にフラれる準備をしておきたいんだけど。」
佐藤「いや、彼氏いないじゃん。」
山田「うん、いないんだけど。」
佐藤「彼氏いないじゃん。」
山田「うん、いないんだよ。」
佐藤「えーと、ああ、そうか。(カタコトで)…アナタ、カレシ、イナイデスヨネ?」
山田「日本語わかってるから!」
佐藤「マジで?」
山田「もう茶化さないでよ!」
佐藤「だって、急に変なこと言うからビックリしちゃって。」
山田「とりあえず聞いてくれる?うちはね、告られる準備は5年前からしてんのよ。もういつでもどこからでも来いって感じなのよ。」
佐藤「(観客の方を向いて)お客様の中に、山田を救う勇気のある方はいらっしゃいませんか?」
山田「え、何してるん?」
佐藤「あ、お構いなく。」
山田「この前、衆議院予算委員会を見ていたとき気づいちゃったんだよ。どちらかというと、フラれたときの準備をしておいたほうがいいんじゃないかって。」
佐藤「どのタイミングで気付いてるんだよ。っていうか、衆議院予算委員会見てるの?JKはネトフリ見とけ!」
山田「だってさ、不幸な出来事の方が強いショック受けるでしょ。事前に体験しておいたほうが、いざという時に冷静に対応できるじゃん。泣き叫んだり、惨めな姿を見せたくないし。出来るだけかっこよく去りたいわけ。」
佐藤「まあ、確かにね。一理あるわ。」
山田「っていうことで、佐藤。きみに彼氏役をやってほしいのだ。そして、うちを思いっきりフってほしいのだ。」
佐藤「えー?……まあ、良いけど。」
山田「意外とすんなり。」
佐藤「でも1週間くれない?」
山田「なんで?」
佐藤「演劇部の部長としては、生半可な気持ちでやりたくないわけよ。念入りな役作りをさせてほしいわけよ。」
山田「いやいや、そういうのいいから。サッとやってくれればいいのよ、サッと。」
佐藤「おい、演劇なめんなよ。」
山田「こわいな。分かったよ。」
佐藤「そうだ、山田の好みのタイプってどんなん?それに近い彼氏になりきるからさ。」
山田「もう〜、そんなの!決まってるじゃん!(照れながら机をバンバン叩く)」
佐藤「え、誰?」
山田「タラちゃんだよ!」
佐藤「たたたたたたたたらちゃん?!」
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