伏見のジュリエット
伏見のジュリエット
作:健康 (劇団ひなたぼっこ/自由バンド)
原作:ロミオとジュリエット(著:シェイクスピア/訳:中野好夫)


【登場人物】
ロミオ   モンタギュー家の息子
ジュリエット キャピュレット家の息女
ベンヴォーリオ モンタギューの甥。ロミオの友人
マキューシオ 大守の縁戚。ロミオの友人
ティボルト  キャピュレット夫人の甥
乳母(ばあや) ジュリエットの乳母
シスター  伏見の教会の修道士


【0】プロローグ

    伏見、とある一室。
    ベンヴォーリオ登場。

ベンヴォーリオ 花の都のキョウトは、北部から流れる川を中心にした都市づくりで発展している。豊かな自然と祭りを好む人間性から「真のロマンはキョウトにあり。そしてキョウトはロマンにあり」と言われてきた。そのキョウトで、古くからとても仲の悪い二つの名家の子どもたちが、あろうことか恋に落ちる。しかし、結ばれた二人は、哀しい運命により出会って数日で死んでしまう。愛する子どもを失った両家はようやく過ちに気づく。ロミオとジュリエットの物語ほど、不幸な物語はない。

ベンヴォーリオ だが、問いたい。本当にロミオとジュリエットの物語は哀しい結末なのか。本当に二人は死んでしまうのか?これは、ロミオとジュリエットが決して不幸にならない、物語

【1】喜劇

鴨川デルタ。
    キャピュレット家とモンタギュー家の家来同士の揉め合いが起こり、ようやく落ち着きだしたころ。
サイレンの音が小さくなっていく。
川を眺めるベンヴォーリオ。
ロミオ、登場。

ベンヴォーリオ おはよう。ロミオ
ロミオ   まだそんなに早いか?
ベンヴォーリオ 9時になったところだ
ロミオ   そうか、時間は中々進まないな。今のはお父様か?さては、またキャピュレット家と揉めたな
ベンヴォーリオ 僕は仲裁しようとしたんだ。うちとキャピュレットの家来が言い争いをして、言い争いならまだよかった。そこにティボルトが、キャピュレット家のティボルトがやってきて、奴は刀を抜いた。それで騒動は広がって、僕らは酷く怒られた。次に揉め事を起こしたら、もう両家はキョウトを歩けないそうだ
ロミオ   まったく、僕の知らないところで
ベンヴォーリオ ロミオ。君がいたら、君はティボルトを刺しただろ
ロミオ   さあね
ベンヴォーリオ いや、今の君はどうだろう。ああ、すまない。見てしまったんだ。悩み苦しむ君の姿を。今朝、まだ太陽が出ない朝。東山の東へトボトボ歩く君を見た。哲学の道は悩むのに最適だよな。僕もよくわかる
ロミオ   そんな朝に僕を見つけた君の方が変だ
ベンヴォーリオ 何に悩んでいるんだ。恋か
ロミオ   恋・・・君は笑うか?
ベンヴォーリオ 笑わないさ
ロミオ   叶わぬ恋をしている
ベンヴォーリオ やはり、恋だったのか
ロミオ   恋がこんなにもつらいなんて、どうして誰も教えてくれなかったんだ。僕は、特別になれない僕を呪ってしまう
ベンヴォーリオ 特別になりたいのか?
ロミオ   そうさ、僕は誰かの特別になりたい。ぼーっと流れる鴨川のように、代わり映えのない世界の中で、叶わぬ恋に苦しむほど寂しいものはない
ベンヴォーリオ そんなに恋する相手は誰だ。誰が好きなんだ
ロミオ   ・・・ロザライン
ベンヴォーリオ ロザライン!あの?
ロミオ   ああ
ベンヴォーリオ 悪いことは言わない、ロザラインはやめておけ
ロミオ   なんだと?
ベンヴォーリオ 君は、そうやって一人だけを見るから周りの輝く星に気づかないんだ。もっと周りを見たまえ、もっと君に相応しい人はいる
ロミオ   ベンヴォーリオ!いくら君でも、怒るぞ!
ベンヴォーリオ 僕は君のためを想っているんだ。なのに、ロザライン、ロザラインって君は言う!
ロミオ   好きになったのだから仕方ないだろう
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