砂場整備隊
砂場整備隊
イシハラ
ハイタニ
イワタ
ハナオカ
カネヒラ
ハイタニ、正面を向いて語り。
ハイタニ 皆さん誰しも一度はこのように考えたことがあるのではないでしょうか?自分
たちが砂場で作った砂の城は一体誰が壊しているんだろうって。そう思うのも当然です。頑張って作った砂の城も次の日には跡形もなくなり、元の砂場に戻っているのですから。何を隠そう、それを行っているのは私たち、砂場整備隊なのです。初めまして。砂場整備隊東京支部副隊長のハイタニです。私たちの仕事は深夜の公園へ行き、砂場を元の状態に戻すこと。砂の城を崩して、平らにして、白砂を被せる。ここまでやって整備完了です。元の砂場に戻すため、私たちは今日も深夜の公園へとやってきました。
深夜の都内の公園。イシハラ、ハイタニ、イワタ、ハナオカ、カネヒラが立っている。
イシハラ え~夜遅い時間にご苦労様です。今日も手際よく速やかに砂場を整備していきましょう。よろしくお願いします。
全員 よろしくお願いします。
イシハラ そして今日からこの砂場整備隊東京支部に新たに配属になった方がいます。カネヒラさんです。よろしくお願いします。
カネヒラ カネヒラです。よろしくお願いします。
ハイタニ 副隊長のハイタニです。
イワタ イワタです。
ハナオカ ハナオカです。
イシハラ そして私が隊長のイシハラですよろしくお願いします。それではさっそく作業に取り掛かりましょう。全員持ち場についてください。
全員 はい。
各自、道具箱から道具を取り出し位置につく。
イシハラ 準備は大丈夫ですか。
全員 はい。
イシハラ それではカネヒラさん、始めてください。
カネヒラ はい。
カネヒラ、砂場整備を始めようとするが手が止まってしまう。
イシハラ カネヒラさん、どうしたのですか。早く作業を始めてください。
カネヒラ は、はい。
カネヒラ、再び砂場整備を始めようとするがやはり手が止まってしまう。
ハイタニ カネヒラさん?
イシハラ カネヒラさんいい加減にしてください。時間がありません。速やかに作業を開始してください。
カネヒラ ごめんなさい、私にはできません。
イワタ はい?
カネヒラ 私には、この砂の城を壊すことはできません。
イシハラ 何を言っているんですか。それがあなたの仕事です。
カネヒラ わかっています。わかっていますけど・・・。この砂の城は立派すぎます。
イシハラ は?
ハイタニ え。
カネヒラ だって考えてみてくださいよ。こんな立派な砂のお城見たことありますか?きっと作るのすごい大変だったと思いますよこのお城。そんな時間をかけて作ったものを壊すなんて私にはできません。
イシハラ カネヒラさん。
ハナオカ はぁ、カネヒラさんね、私も入りたての頃はそう思ってた。だけどこれが私たちの仕事なの。私たちがこの砂の城を壊さなかったらこの砂場ではもう誰も遊べないでしょ?だから辛いのはわかるけど、崩さなきゃいけない。わかる?
カネヒラ それはわかりますけど・・・。
ハイタニ いや、カネヒラさんの言い分も一理あるかもしれません。
ハナオカ ハイタニさん?
ハイタニ 私はこの東京支部で二番目のベテランですけど、こんなに立派な砂の城は見たことがありません。これはもはや遊びの域を超えた、そう、芸術です。この芸術を保全することも私たち砂場整備隊に求められた仕事なのではないでしょうか。
ハナオカ 何を言ってるんですかハイタニさん!どんな砂場でも元に戻す、そう教えてくれたのはハイタニさんじゃないですか。この砂の城を崩して、元に戻すべきです。
イシハラ ハナオカさんの言う通り。どんな状態の砂場であっても、明日遊ぶ人たちのため心を鬼にして砂場を整備する。それは決して人がやりたがる仕事なではないのかもしれない。でも、だからこそ私たちに与えられた誉高き仕事なのです。
ハイタニ それはそうですけど・・・時にはその場に合わせてルールを変更する。その柔軟性も我々砂場整備隊に求められる考え方の一つではないでしょうか。
カネヒラ そ、そうですよ。この砂の城は残しておくべきです。
イワタ うんうん。
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